· 

仕事と人を分けて考える。

こんにちは! 

Achself 代表 キャリアコンサルタントの天野典子です。

 

今日は、前回の仕事の属人化に通じるエピソードを紹介します。(前回ブログ「その仕事、属人的になってない?」はこちら

 

▷シチュエーション

 〇×社 営業部 △課

 

▷登場人物(4名)

 

※担当業務の難易度を10段階としています。

 

●Aさん

チームのベテラン。入社10年目 業務難易度8

 

●Bさん

入社6年目。仕事のできるAさんを尊敬している。業務難易度6

 

●Cさん

入社2年目。先輩2人に教わりながらも少しずつ仕事が自己完結できるようになってきた。業務難易度2

 

●マネージャーZさん

Aさんのリーダーシップと業務遂行力を高く評価している。

BさんもCさんも順調に育ってくれているしチームワークも良い。特にBさんは能力も高いし今後の成長に期待。

AさんBさんの姿勢はCさんの成長にも良い影響を与えていくはず。このメンバーで引き続き頑張ってほしいと考えている。

 

チームとして団結力もあり順調な△課。

 

ところが、先日チームのキーパーソンであるベテランAさんが転職を理由に退職の意思表示をしました。

 

マネージャーZさんをはじめ後輩のBさんCさんは、Aさんが抜けることへの不安もあったし、何よりこの先も一緒に仕事ができるものと思っていたのでとても残念に思いAさんと何度か対話を重ねました。

しかし、Aさんの意志は固かったため前向きに送り出すことにしました。

 

とはいえ、退職まであと2ヶ月しかない状況!!

 

取り急ぎ人員補充のため派遣社員の採用を検討することにしました。

マネージャーは、焦って人事部へ下記の条件で求人するように依頼しました。

 

【求人条件】

Aさんの代わりをこなせるレベルの派遣社員を探してほしい。

Aさんの仕事を派遣社員の方へ引き継ぎする予定。

Aさんの業務レベルを考えると、引き継ぎにそれなりの時間が必要なため急募でお願いしたい。

 

この条件、どう思われましたか?

あなたがマネージャーだったらどのような条件で人員補充をしますか?

 

このケース、「Aさんの代わりをこなせるレベルの人」、つまり「AさんとAさんの仕事」をセットとして考えている点で仕事を属人化して考えてしまっていると言えます。

 

Aさんの仕事は難易度8の高いレベルにあり、その能力・スキル・判断力・社内外の人脈はAさんが10年かけて培ってきたものです。

 

このレベルを派遣社員にたった2ヶ月以内(実際は求人に時間を要するので1ヶ月くらいかもしれません)で引き継ぎをすることや、Aさんと同じ役割を期待することは酷であるし現実的ではありません。

Aさんレベルの人材は市場にいるかもしれませんが、母集団は小さく人選に時間がかかること、また報酬条件が予想外に高くなる可能性も高いです。急募の条件に合いません。

 

それなら、ベテランのAさんに近い存在として成長してくれているBさんがAさんの役割を主に引き継ぎ、AさんとBさんの仕事の一部をCさんと採用予定の派遣社員へ引き継ぎする方が実現可能です。

 

もちろんCさんは入社2年目、派遣社員は社風も分からない状況で業務にあたるため、できるだけ社内外の折衝が複雑でない定型業務を切り出して渡していく工夫は必要です。

 

また、BさんもAさんから引き継ぎながら、並行してCさんと派遣社員へ教えることになるので負担は大きくなるでしょう。

でも、Aさんが退職するまではAさんもCさんや派遣社員へ教えることだってできるし、Cさんや派遣社員もBさんは今後も会社にいてくれるので退職するAさんに依存することなく仕事に向き合えます。

 

したがって、仕事を属人化させない視点から望ましい求人条件は、下記となります。

 

【求人条件】

難易度3()以上の能力・スキルのある人材

※入社2年目の難易度2のCさんより経験が少しある人をイメージしています。

 

この条件であれば、市場の母集団は大きく人選もスムーズにいくでしょう。

急募の条件に合います。

 

今回の場合はAさんの退職でしたが、部署異動などで人員が減ったり増えたりするタイミングは脱属人化の視点を持つ絶好のチャンスです。

仕事と人を切り離して考えると、採用や人員配置の面で選択肢が広がります。

 

仕事の属人化による慣れで、

 

非効率なやり方に本人も周囲も気づかないケース

本人しか分からない「マイルール」ができてしまうケース

 

あなたの職場はどんな状況ですか?